小さなつまずき、大きな壁
現役生活から年金生活に移り、給与控除されていた税金は自己申告制になりました。いわゆる確定申告で、これは欠かせない年中行事になっています。私は e-Tax を使って申告していますが、家にいながら手続きができ、マイナンバーカードさえあれば夜中でも申告できるのは本当にありがたいことです。ただ、その便利さを十分に使いこなすには、やはり少しばかりの慣れが必要だと毎年感じています。
申告書作成の画面にたどり着きさえすれば、あとは源泉徴収票や生命保険料控除証明書などを見ながら数字を入力するだけです。しかし、その「たどり着く」までが一苦労です。
ある年、前年からシステムが少し変わっただけで、どうしても作成画面に進めず、何時間も格闘した末に諦めました。翌日、臨時の税務署窓口へ行って職員の方に横で教えていただきながら進めると、あっという間に終了。前日の苦労は何だったのか、と肩の力が抜けました。出来る人なら20〜30分で終わる作業なのでしょうが、年に一度の作業なので毎回リセットされてしまいます。
自分の能力が特別低いとは思っていませんが、それでも毎年「今年も無事に終わるだろうか」と少し緊張します。そんな自分ですらこうなのですから、IT機器に不慣れな高齢者の方々はどれほど困っているのだろうと、ふと考えてしまいます。若い人でも、パソコンを持っていなかったり、スマホは電話とメールだけ、という人は意外と多いものです。
最近、電気料金の口座振替手続きが複雑で放置していたら督促状が届いたという高齢者の話をSNSで見かけました。何ヶ月分も滞納していた状況で、年金生活者にとってはかなりの額になっており、茫然としてしまったようです。口座振替の手続きでさえ難しいのですから、e-Tax のような手続きはなおさら大変です。便利な仕組みが増える一方で、「できる人」だけがスイスイ進み、「できない人」は置き去りになってしまう現実を感じました。 社会の仕組みが進化すること自体は良いことだと思います。でも、そのスピードに合わせられない人がいることも忘れてはいけないと感じます。誰もが安心して使えるような設計や、困ったときに気軽に頼れる支援がもっとあれば、便利さは本当の意味で「みんなのもの」になります。
そして、こうした課題に少しでも寄り添えるように、私自身が進めているNPO法人の活動の中で、何か一つでも力になれる取り組みを形にしていけたらと考えています。生活の中で感じる小さなつまずきが、誰かにとっての大きな壁にならないように…。そんな思いを胸に、できることから始めていきたいと思っています。
